仮面ライダー☆華○鬼☆ | おとうさんのおもちゃばこ

仮面ライダー☆華○鬼☆

学問の社として昼間は修学旅行生で賑わう北野天満宮。
室町時代に焼失した北野天満宮再建の折、残り木で七軒の茶屋が建てられたのが、上七軒の始まりだとされている。
上七軒、祇園甲部、宮川町、祇園東、先斗町の京五花街の中でも最も歴史があるのだが、夏の上七軒歌舞練場庭のビアガーデンでは一見でも遊べる気軽さもある。
何より木屋町周辺の毒々しいネオンの瞬きとは無縁のしっとりした雰囲気は落ち着いて散策を楽しむ事が出来、所謂京都らしさを色濃く残している街なのである。
団子が象られた提灯が薄飴色に輝いており、千本格子の脇の暖簾をくぐると、舞妓が花紀を出迎える。
一階のカウンター脇の階段から二階へと続く。その最も奥のいぐさの香り漂う6畳程の部屋でその舞妓と向き合った。
「ようおこしやす~。3年ぶりどすな~」
「ああ、雪乃。岩手の田舎娘だったがもうすっかり舞妓が板についてるじゃないか」
「そうどすか~。おおきに」
言葉とは裏腹に少し機嫌を損ねたのか、ついと横を向いてしまった。
「そして綺麗になったなあ」
じっと見つめる花紀に顔を背けたまま、ゆっくり瞳を向ける。
白粉でも隠しきれない薄紅色が頬をさした。
初めて会った時が15歳だから今は18歳の筈だ。
こちらを向いた少し切れ長の眼が高く整った鼻梁へ続き、紅を差した口元は控えめに微笑していた。
砂糖の結晶の様な美しさだと花紀は思った。
この花街を一歩けば蟻どもが群がってくることだろう。
北野おどりの様子を聞こうとした時、襖が開いた。
老齢の女性が優雅な立ち振る舞いで雪乃の隣にすっと座った。
美しく豊かな白銀色に輝く髪は丁寧に結い上げられており、漆黒の着物姿が凜としている。
「おししょうはん…」
雪乃の言葉を聞きながら、花紀はその女性の右手で握られ、左手を添えられた巻き物を凝視していた。