仮面ライダー☆華○鬼☆ | おとうさんのおもちゃばこ

仮面ライダー☆華○鬼☆

貴船神社は京都の市街を流れる鴨川の水源地にあたり、平安時代には和泉式部も参詣したという由緒ある社である。
夏は緑に萌え、秋は朱に染まり、冬は白く覆われる。季節の美しい彩りを魅せる山間では清流が涼やかな音色を奏でており、水の神が見守るこの土地には浄化された命の源が輝き溢れている。
牛若丸伝説で知られる鞍馬へと至る京福電車の路線、貴船口駅のそばの高架にたたずむ二つの影があった。
将棋盤を挟んで対峙する一方の影は花紀であった。
駒が浮き、パチリと音を鳴らす。
「奴は手負いだ。御神水で傷を癒しに必ずここに現れる」

懐から先刻雪乃から手渡されたわさび色の包みを取り出した。「式針が5本ある。雉を飛ばし、狗を走らせてくれないだろうか?」
顎に手を掛け、すこし考えている仕草をしている相手の姿を月光が闇を溶かし浮かべた。
「なあ、申王…頼むよ」
巨大な猿が盤の前にあぐらをかいている。
ゆっくり顔を上げて花紀を見つめ、軽く2、3度頷いた。
「ありがたい…恩に着るよ」
包みを猿は受け取り一本ずつとりだし、透かしたり、両端を摘まんで曲げたりしながら質を見定めている様だった。
「それともう一つ…」
針を包みに戻しながら申王は花紀を再度見つめた。
「その駒待ったにしてくれないか?」
歯を向きニッと笑ったが首は横に振られていた。
星々が一つ二つ夜空を去り、やがて地の裾が白み始めた頃、いつの間にか、二つの影と一方的に勝負のついた将棋盤はもういずこかに消え失せていた。