555+ | おとうさんのおもちゃばこ

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足がガクガク震え、脂汗が吹き出してくる。
まるでザリガニを模した灰色の鎧を着たような化け物が紺色の背広をきた男性にじりじりと迫ってきた。
最初は仕事帰りに少し呑みすぎた所為だと思っていた。
だが…この苦痛が否応なしにこれは現実だということを示していた。
安物の背広は化け物が振り下ろされたハサミで引き裂かれ、赤く染まっている。
嬲りながら狩りを楽しんでいる…。
そう思いついた時、恐怖は頂点に達した。
叫ぼうにも既に声すらでない。絶望という感情すら消えうせようとした瞬間!
長髪の若者の姿が化け物の向こう側に見えた。
腰には銀のベルトを巻いており、見たこともない携帯電話を片手で揺らすように開け、ダイヤルを押し、ゆっくりと耳元に押し当てていく…。
「変身!」と言う声を聞いた後、ぐらっと景色が揺れ、夜の闇と同化するように意識が遠のいていった。