555+ | おとうさんのおもちゃばこ

555+

コード555「ファイズ」によって衛星から放たれた強化服起動の為の光の粒子が巧を包む。
その閃光はやがてベルトから流れるフォトンブラッドによって塗り替えられ、深紅に染まる。
再び夜が闇の色を取り戻した時、そこに立つ者は…。
漆黒の体に銀のアーマー、ベルトを着け、昆虫の複眼を大きくしたヘルメットは黄色く輝き、Φ(ファイ)の記号の様に見える。
強化服のエネルギーであるフォトンブラッドは深紅色の力強い線となって四肢に伸びている。
右手を軽くシュッシュッ!と2回振り…555に変身した巧は言った。
「俺が相手するよ」
相手はオルフェノクだ。人間を選別して仲間を増やし、非適格者は殺してしまう化け物に遠慮などいらない。実験を終え、正式にスマートブレインのオルフェノク狩りに参加することになってから一ヶ月。
巧は人を助けているのか、それとも…狩りを楽しんでいるのか解らなくなって来ていた。
オルフェノクに打ち込まれた555の拳は数十トンの衝撃と鈍く激しい音を生み出した。だが、驚くべきことに戦車の装甲ですら貫くその威力を以てしてもオルフェノクにダメージはなく、巨大なハサミを振り下ろしてくる!
チッとヘルメットに軽く火花を咲かせながらも避けたそれはアスファルトで固められた大地を砕き、震わせた。
終わりにしよう…。555は素早く後ろに飛ぶと、ベルトに差しこまれた携帯555フォンからΦ型のピンを取り出しポインターに取りつけた。それを右足に素早く装着し、オルフェノクに向ける!
深紅の光が円錐状に広がり、その突端はオルフェノクを襲いかかる牙のようだった。
クリムゾン・スマッシュの光はまた…オルフェノクの墓標でもあった。
その光に入り込むかのように飛び蹴りを放つと円錐の光はドリルのように回転し、オルフェノクの分子構造をほどき、破壊していく。
やがて貫くように透かし、555が飛び蹴りから着地した時、オルフェノクはゆっくり振り返った。
その刹那、灰となって崩れおち、闇に吸い込まれていった。
サラリーマンは…息がある。
あとは会社がなんとかするだろう。
だが…なぜオルフェノクは崩れ落ちる瞬間、こう呟くのだ。
「いぬい…」あるいは「たくみ…」と。